死因はインターネット

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人間としてのヒーロー(アイデンティティ・クライシス)

友人とこんな会話を交わしたことがあります。

「MARVELのヒーローは仲悪くて内ゲバばっかりなんだよね、その点DCは割と仲が良い……」

(誤解がないように言っておきますけど膨大な量の作品が同居するアメコミのカラーを一言で決めつけてしまう程おバカじゃありませんからね、こーゆー側面あるよね〜〜笑程度に捉えてください)

 

白状します、これは嘘です。バットマンを見ればわかる。だけど……それ以上にDCコミックスの世界に影と質感を与えた作品がある……それがアイデンティティ・クライシス、今回紹介したいコミックです。最初に言っておくと本書のようなイベントタイトルはその世界のヒーロー等について割と知ってる前提で話が進むので事前知識が薄い状態で読んでもあんまり楽しくないかもしれません、脳が混乱しながら読むとこになるので。ある程度知識身についてから読み直すとすごく楽しめるよ!気になったヒーローはwikiで調べてみよう!

 

概要

アイデンティティ・クライシス

アイデンティティ・クライシス

 

 

本国では2004年6月から12月にかけて発行、翻訳版がヴィレッジブックスにて最近(一年前……?もうこんなに経ったのか……)発売されました、巻末のコラムは必読です。ライターはブラッド・メルツァー、小説畑の人っぽくて自分は詳しくないですね……というかこの頃のユニバースの状況も詳しくない、ロビンはティムでフラッシュはウォリーでランタンはカイル。この直後にハルがランタンに復帰したりインフィニット・クライシスに向けてキナ臭くなって来るんですかね。

あと言い忘れてましたが本記事はクライシス三部作(アイデンティティ・クライシス/インフィニット・クライシス/ファイナル・クライシス)についての記事の第一弾となります、なれたらいいですね、ファイナル・クライシスは邦訳が出てから読み込まないとですけど……(ただでさえプロットが混沌を極めているのにその上英語ってまじで自分にはムリです)

 

あらすじ

普段通りのアメリカ、ヴィランが悪事を働きヒーローがそれを阻止する日常の中のある夜、ヒーローの家族が殺害される事件が起こりました。エロンゲイテッドマン(ラルフ・ディブニー)の妻スー・ディブニー、スーパーパワーを持たないながらもジャスティス・リーグの名誉メンバーにもなっていた彼女の死はヒーローコミュニティに大きな衝撃を与え多くのヒーローがその捜査を行います。

部屋に侵入した手段もわからず手がかりは彼女の焼死体のみ……という状況の中グリーンアローらある時期のリーグメンバーは伏せられていた過去の事件で彼女と因縁のあるDrライトというヴィランを追いますが、その中でリーグの過去の行いが明らかになり……

 

歴史に意味を与えるということ

Drライトを追うのはある時期のリーグメンバーでとあーる事件の当事者の面々、寡婦となったエロンゲイテッドマンはじめグリーンアローホークマン、ザターナ、ブラックキャナリー、アトム、そしてフラッシュとグリーンランタンです。しかしフラッシュとグリーンランタンは当時のメンバーである2代目のバリーとハルから名前を受け継いだ別人、現フラッシュのウォリーはバリーの甥っ子ですしランタンのカイルは何やかんやでやんちゃしていたハルと面識があるので別に赤の他人って訳じゃないですけど。当時のことを知らない現フラッシュに告げられたリーグの過去の行い、それはヴィランの記憶の改ざん、そしてスーの関わる事件がきっかけで(これはちょっと実際に読んだほうがいいと思いますので伏せます)やむを得ずDrライトの人格を改変してしまったという汚点でした。

 

ヴィラン達がヒーローの正体を知ってしまったら……狙われるのは本人だけでなくその家族でしょう、正体がバレないのはお約束や偶然ではなく裏でその処理をしているからなのです。それだけなら良かった、しかしこの事件におけるDrライトの場合は只の記憶操作だけでは危険すぎる、という判断が下され人格の矯正が挙がりました。道徳的にどうかという問題がありますね、間違い無くスーパーマンならやらないでしょう、しかしその場にいたのはスーパーマンではなく格下(こう言う言い方は語弊がありますね……でもスーパーマンが別格すぎるので……)のメンバー達……その結果かつては強敵だった(という設定)のDrライトが若年ヒーローチームのタイタンズにシバかれる三流に改変されたのです、説明の為こう言ってるだけであって別にディスってる訳じゃないですよ!これは恥ずべき出来事として歴史の闇に葬られていました……という設定です。

 

本書の出来事はもちろん当時の時系列上にありますが、やってることとしては過去を洗い出しそこに(後付け)設定、しかも後ろめたい事実を加えること。昔はそーゆー物だったんだからいいんだろ!って古参の読者からしたらブチ切れ案件なのかもしれません、自分は当事者じゃないのでフラットな気持ちで読みましたが。しかし本書のスゲーとこは後付けの裏取りしっかりなされてるんですよね、良質なパズルのような。ホークマングリーンアローはいつもいがみ合っていた、だからそこに目をつけて対立のきっかけとなる事件を配置しよう、よくやるな……(何度も言いますけど別にそこまで昔のコミックを読んではいませんが……)この辺、アメコミの持つ歴史の長さ特有のライティングですね。

 

あ、でもバリーのアレは腑に落ちないぞ、自分の中でバリーは善人なので、理解はできても納得いかねぇからな!!

 

ヒーロー、そしてヴィランのコミュニティ

このストーリーではカルキュレイターというヴィランにスポットが当たっています、悪党であるヴィランに仕事や情報を売るブローカーですね。

 

ヒーローにはコミュニティが存在し、チームを組み、時に他のチームと交流し(タイタンズのトレーニングに誰か手の空いてるリーグメンバーはいるか?と訪ねるシーン、好きです)、ピチピチのスーツで冠婚葬祭を行う。本書でもスーの葬式の様子が見開きで描かれるのですがただ戦うだけのヒーローではなく彼ら彼女らにも生活があるということをインパクト大で伝えてくれます(しかし一般の参列者のほとんどは皮肉にもヒーローを一目見たいがために参加……リアルすぎる……)。

同様にヴィラン側にもコミュニティが存在し、カルキュレイターはその象徴とも言えるキャラクターです。誰が撃たれて重症だ〜だのいい武器があるぜ〜だの、駄弁りながらボードゲームをしているだの、同一ユニバース上の存在ですのでどっかで顔も合わせるだろうしコミュニティが存在するのはよくよく考えれば当然ですね。本書はそれを特にフューチャーした数少ないストーリー(自分調べ)であり、物語……というより世界に質感を与えています。スーパーマンを代表する敵役のルーサーが弁護団を出し、逮捕されたはずのヴィランは無罪で娑婆に出る、コミックのお約束に納得の行く理由付けがここでも為されています(バットマン系のヴィランアーカムがほぼ出入り自由みたいなもんなんですけど……)。キャプテンコールドの「ほぅ、息子が?なら業界デビューか」って台詞があるんですけど渋くてかっこいいですよ……

 

リーグに追われたDrライトもこのコミュニティに助けを求め、デスストロークをリーグ対策に雇います、このバトルは必見ですよ(というかまともなバトルシーンここくらい?)。策を張り巡らせたデスストロークがエグいくらい的確にリーグメンバーを無力化していく姿は息を呑みます。

 

 

ビッグ3の神聖さ

ここまで読んで気付くと思いますが本書におけるスーパーマンワンダーウーマンの役割は他のイベントタイトルと比べると非常に薄いです、もちろん出番はありますが……本書の主役はヒーローでは無くヒーローのコスチュームを着た人間なのでスーパーマンらビッグ3(一応言っておきますとスーパーマンバットマンワンダーウーマンの3人のことですよ)は決して侵してはいけない殿堂として配役されています。世界最高の探偵であるバットマンはスーの事件の捜査でも作中序盤においては置き手紙を残すだけで姿を見せず(置き手紙のコウモリのシンボルだけで存在感を出すブルースさん流石です……)容疑者のスリップノットスーサイド・スクワッドの映画ですぐ死んだ彼です、を尋問するシーンではワンダーウーマンの顔にスポットは当たらず描かれるのは真実の投げ縄だけ……この辺の線引きによってドロドロした、リアルな作中においてスーパーマンらの神聖さは(少なくとも本作においては)保証され、そしてそれによって他のヒーロー達の「人間」としての側面が強調されています。

 

まぁ、バットマンは先述した「汚点」に大きく関わっていますが……あくまで被害者側なのでブルースは悪くないですよ……これがきっかけとなり人間不信に陥ったバットマンが次のインフィニット・クライシスに関わるアレで大きくやらかす事になるんですがそれは別のお話……あとワンダーウーマンも別件でやらかしちゃいましたね。

 

人間としてのヒーロー

また、記事では深く触れなかったのですが「家族」が重要なテーマとなっています、特に終盤。人間だもの、家族の存在は切っても切れませんよ。これについては確かに読んでいて考えるものがありました……が自分が上手く文章に出来なかった……ブルース……

アイデンティティ・クライシスはヒーローの家族に訪れた悲劇から始まりとあるヒーロー、ヴィランの家族にまつわる悲劇を引き起こし……そしてあっけなくも残酷な事実で幕を下ろします。ヒーローの人間性に深く切り込んだある意味怪作?とも言える本書。綿密に計算され尽くした構成で、活劇とはまた違ったリアルで深みのあるストーリーを楽しみたい人にはめちゃくちゃ響くと思います。そしてDC沼に浸かろう、NEW52!のジャスティス・リーグとかバットマンとかリバースのバットマンとかから入るのがオススメですよ。

 

ところで、最初に薦めるアメコミがアイデンティティ・クライシスってなんかやだな……