死因はインターネット

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機械の反乱

今まで言ってはいなかったが自分は喫煙者だ。そして平和を愛する、故に吸う銘柄はピースLights。喫煙所のことはサンクチュアリと呼んでいる、新宿東南口付近の喫煙所は屋根があってベスト・オブ・サンクチュアリのひとつである。

 

 

例の如くドトールコーヒーに行った日のことだ。

 

アイスコーヒーMサイズを注文し、グラスひたひたまで注がれた真っ黒ジュースが手渡される。この前ガムシロとミルクを1つずつ取ったつもりがミルクを2つ取っていた苦い記憶を思い出し、「ヨシ!」と言いながらガムシロを確保する。

 

右手にひたひたのアイスコーヒー、左手にガムシロとミルクと鞄、早くテーブルにこれらを置いてピコ太郎したい……そう思いながら席へ向かって足を動かす。二足歩行は人類の進化の結晶だ。

 

だいたいの喫茶店は喫煙ルームと禁煙ルーム間を自動ドアで区切っている。サイゼリヤは区切りが甘いのに。

喫煙ルームから出る人とすれ違う、自分はぶつからないよう脇に避ける、これが江戸しぐさだ。

さっき出た人が自動ドアのボタンを内側から押してくれたおかげでドアは開いている、物を持ちながらボタンを押すしぐさは傍から見る時滑稽なので道化しぐさをしなくて済む、ラッキー♪と思った。

 

ボタンを押せば左から右へと開く自動ドア、これは豆知識だが左から右へ開くドアは閉じる時右から左へガラス戸がスライドして迫ってくる。

 

ここまで言えば何が起きたかは察しがつくだろう。自動ドアをくぐり抜けようとした自分の右腕に制限時間を迎えたドアが迫り……ピコ太郎した。

 

今まで何度か自動ドアに攻撃されたことはある、友人の目の前でアタックされた時はちょっと痛いけどウケがとれておいしいなと思ったが今回は違った。その時は何も持ってなかったし。

腕への攻撃は肘、手首、指、あらゆる関節を通り右手にホールドされたアイスコーヒー・ひたひた・グラスを振動させる。表面張力の限界を超えたコーヒーは地球の重量に負け、ビチャ……と情けない音を立てて地面を濡らした。MサイズがSサイズになった。

 

目の前の席にいたババアがこっちを見る、やめろ。そして何も見なかったかのように目を逸らす、そうだ、わかってんじゃねぇか。

 

 

早急にリカバリーする為カウンターにUターンした。以前ハンバーガーショップで1階から2階へ上がる時につまずいてポテトをぶちまけた経験があったからだ、「すみません、コーヒー床に零しちゃいまして……」と伝える。「服にかかってたりしませんか?」と言われ、気を遣わせたことを心の中で謝罪した。悪いのは自分……いや自動ドアの野郎なのに……

 

ペーパータオルをいっぱい出して床を拭く兄ちゃんの姿、飲食店の店員に地べたを触れさせてしまった申し訳無さが積もる。その姿を見ながら啜ったコーヒーは人類の機械への敗北の味がした。

 

 

今この瞬間も、どこかで自動ドアは油断した人類を襲っているだろう。ターミネーターの世界は目前に迫っている。人類に敵意を持つ機械を滅ぼさぬ限り、世界に平和は訪れない。そう思いながら、平和の煙を肺に取り込んだ。